日本よりも中国を重視しだした米国人
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 アメリカでは、60チャンネルほどある外国語テレビ放送のうち、スペイン語での番組の次に多いのが、
北京語と広東語のニュース番組やドラマである。 
それだけではない。経済専門チャンネルCNBCでも、「ナスダックが中国上海指数に連動している」
「上海株の動きを追えばナスダックの動きがわかる」とさえ伝え、ナスダックの次に上海指数を
紹介している。日経平均についてはその次である。
 かつて日本が注目され、大事にされていたように、今は中国がそれに代わっているのだ。
 それもそのはず。たとえばサンフランシスコ市だけをみても、約80万人の人口のうち中国人が15万人と
2割を占めている。中国系、フィリピン系など含めたアジア系は、街全体の半分をも占めるほどになった。
 数年前であれば、ホテルのクリーニング係や24時間デイリーショップ、工事現場など、きつくて人気の
ない仕事は中国人が占めていたが、今はメキシコ人、フィリピン人が請け負っている。報道番組で
「泥棒に狙われやすい中国人の家」という特集があるほど、金持ちで外食の多い中国人の家は空き巣に狙われている。
 また、昨年留学先に中国を選んだ米国人大学生は25%も増加し、米国の若者までが、米国経済にとって
中国はなくてはならない存在であると考えている。
米国依存が成り立たず取り残される日本企業
 日本はどうだろう。米国の経済成長に依存して経済を成長させてきたが、金融危機以降、米国だけに頼ることができなくなり、今後は中国経済に依存しなければならなくなっている。日本にとって、米中との3ヵ国の関係は極めて大事である。しかし実際には、日本抜きの米中での経済連携がすすみ、大きかった日本の存在は、もはや過去のものになりつつある。
 それは、企業においても個人においても同じである。
 米国の多国籍企業は世界中の支社において、人事制度に共通のシステムを導入しているが、
日本の現地法人にだけは取り入れてない企業もある。たとえばヒューレット・パッカードもそうだが、
年功序列、終身雇用型が強い日本法人だけは、例外的な制度としている。せざるを得ないのである。
 労働人口の少ない日本においては高度成長時代、技術者の育成とともに技術の流出を避けるため
にも人材の確保が必要とされ、終身雇用、年功序列型の雇用形態が促進されていた。しかし、
今は必ずしも、それが企業の利益に結びついているとはいえず、新しい雇用システムが求められている。
 年功序列や終身雇用制度について日本国内でも議論はあるが、少なくとも日本に進出した外国企業が
対応しやすい人事制度の準備は必要である。そうでなくても、外資系企業にとって日本市場の魅力は
減少しているのだから。
米国が中国に接近する中、一人取り残される日本人と日本企業
 海外進出した日本企業でも、同じである。日本人駐在員は数年でかわる。
駐在員は現地に赴任しても慣れるのに時間がかかる。第一段階は、赴任スタートから約3ヵ月間のハネムーン期である。第一段階の新鮮さが第二段階のカルチャー・ショック期に変わり、9ヵ月を経た頃の第三段階でようやく異文化への適応期に入るがこれが早い人で10ヵ月、遅い人で2年かかる。
 現地に慣れるのに精一杯で、現地スタッフらとの信頼関係も築けないまま、管理者として日本人が君臨し、現地の人材は管理職に任命しないといった、日本企業だけが特異な人事制度を行い続けている。そのため国際的に有能な人材を採用できずに、中国においても現地採用者のモチベーションを上げることもできずにいる。
 それでも日本経済が強いとき、給料が高いときには、いい人材を確保できた。
 たとえば日本企業は研修が充実しているため、新入社員として日本企業への人気は高かった。
 以前は、日本人と中国人の人的資源の役割がうまくいっていた例もあった。もともと「暗黙の了解」や「以心伝心」のコミュニケーション方式は、日本と中国は得意とする文化を持っていた。それらを活かした日本人の現場の指導者や生産責任者と中国人の経営者や創業者というパターンである。発想力や指導力、リーダーシップなどがそなわっている中国人がアイデアを出し細かい気配りや規律に厳しい日本人が根気よく現場を指導する。中国での日本食レストランや中国にある工場の経営などがこの例にあたる。
中国人は日本人より米国人に親和性が高い
 しかし、これからはどうだろう。以心伝心などのコミュニケーション方式は過去に共通した経験や情報があって始めて成り立つものである。もともと中国人は、日本人よりも米国人との共通点が多い。交渉の方法、権力の使い方、合理主義的考え方、決断の速さなど、同じアジア人で仏教国であり、地理的に近いからといって、中国人の価値観は日本人にけっして近くはない。むしろ米国人の持つ合理主義に近い。
 米国企業にとって、ピラミッド型で決断に時間がかかる日本企業とビジネスをするよりも、
中間管理職の個人レベルで即決できる中国企業とのほうが仕事が進みやすい。
結局、利益が出るのに時間がかからないため日本企業とのビジネスは減少することになる。
 日本企業は新たな魅力を作り出すか、海外支社での人事制度をグローバルなものに改革
しなければ、取り残されるままである。
 中国にとっても米国にとっても、日本企業とビジネスすることは、今はもう魅力的ではなくなっているのである。