業界大予測2015
日本経済
10%増税のカギを握る個人消費の底上げ
消費税の10%への増税は見送られる見込みだが、財政状況を考えればいつまでも先延ばしにはできない。
次回の消費税再増税までに個人消費の回復など経済状況の改善が求められる。
当初2015年10月に予定されていた消費税8%から10%への引き上げは先送りされる見込みになった
景気が期待通り回復していないためである。
回復していない理由は、①GDP(国民総生産)の4~6月は、前年比年率で6.8%減となり、
予想よりはるかに落ち込み ②個人消費を妨げる物価高、③円安みもかかわらず、
日本経済の柱となる輸出産業、製造業が伸び悩んでいる、といったことがあげられる。
GDPの2014年4月~6月は、前年比年率で6.8%減となり、予想よりはるかみ落ち込みがひどく、
消費者物価指数(CPI)は、2013年8月から消費税増税された今年4月までは、
前年同月比は0.9%から1.6%の上昇だったが、消費税増税後から8月までは3.4%、3.7%、3.6%、3.4%、3.3%と
2013年に比べ4倍以上も物価が上昇した月もある。5月の生鮮食品を除いたコアCPIでも、前年比で3.4%で、1982年以来の上昇率である。
<家計消費支出は8%増税前には戻っていない>
一方、個人消費は、落ち込んでいる。家計消費支出では、2014年8月は、
1世帯当たり(2人以上の世帯)282,124円で前年同月比、4.7%の減少である。
5月、8%減少、6月、3%減少、7月の4.7%減少に続き、消費税増税前には戻っていない。
景気動向指数(CI)の推移をみると、景気はまだ谷(底)であり山に向かっていない。
CIの推移は、2014年1月をピークに消費税増税後も下がり続け、5月はマイナス1.9、
6月、7月とやや持ち返したが8月は再びマイナス1.4と下がっている。
景気先行指数の機械受注件数の8月機械受注統計では、
設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた国内民需の受注額(季節調整値)は前月比4.7%増で
3カ月連続増加しているが、9月までの長期優良住宅化リフォームによる国の助成金制度などの
効果によるによる建設業など一部の業種に限る。
金融緩和政策により、株価、不動産投資が急騰したことで住宅バブルの懸念が拡大される。
消費税は所得が少ない人ほど負担が増える。
また、中小企業は増税によりレジや請求書のシステム、会計ソフトなどの設定変更が必要となり、
それらの経費は重なる。
先送りされたとはいえ、増税前10%まで十分な時間があるわけではない。
消費税再増税の前に個人消費の底上げがなされなければ、本格的な景気回復は見込めないだろう。
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