女性自身7月12日号(6月28日発行)
マイナス金利時代にやってはいけないお金の鉄則
審査が通っても自分の返済能力を過信するな!
「マイナス金利によって、私たちの生活にもっともメリットを実感できるのは、住宅ローンなどの借り入れです」
 「各金融機関は日本銀行にお金を預けても、金利をとられてしまう。そのため住宅ローンやマイカー・ローンなどの審査を緩め、
貸し付けに力を入れています。融資によって利益をあげたいですね。また、借り手にとっても、ローン金利が過去最低水準なのは有利です」
 どれだけお得になるのか。35年返済、3千万円の住宅ローンを例にとるとーー。
「金利3.5%の場合では、利息を含め、35年間で総額約5千200万円の返済となりますが、1.5%の場合では総額約3千900万円と、支払額が1千300万円も安くなります。〝借りやすくて、返しやすい〟のですから、家が欲しいと考えていた人にとっては、大きなチャンスです」
 だが、安易に飛びつくと、落とし穴にはまることも……。
「通常、住宅ローンの審査では過去3年間の収入を参考にされますが、過去2年しか調査しないケースや、物件価格の20%が頭金として必要なのに、ほぼゼロでも貸してしまうケースもあるようです。つまり、これまでローンを組めなかった人も、審査が通りやすくなったのです。でも、身の丈以上の無理なローンを組むと、後々、返済不能に陥ってしまうので、要注意です」
 物件選びも慎重にならなければならない。
「23区内でも五輪会場に近いエリアの物件は人気で、価格が上昇していますが、五輪が終わると一気に値が下がる可能性もあります。
また、新築物件は築5年〜10年で2〜4割も安くなります。あえて中古物件を選び、借入額を少なく抑えることも念頭に置くべきでしょう」
 住宅ローンの返済は35年の長丁場。その間には、世の中の景気も変わってくる。
「もっと景気が悪化して、給料が下がる可能性もあります。それでも支払い続けられる返済額でローンを組むと安心です。逆に景気が上向き給料が上がれば、同時に金利も上昇し、返済額も増えます」
 だからこそ、景気に左右される変動金利より、固定金利のほうが生活設計は立てやすいという。
「現在、変動金利で0.5%前後という低金利。これ以上、下がらないほどの水準となっています。逆に言えば、今後は上がってくる可能性があります。ローンを組む場合は変動金利よりも、多少利率は高くても、先々が読める固定金利のほうが安心できます」
〝安心〟というだけで、メガバンクを選ぶな!
「〝安心感〟を求めてメガバンクのローンに目が行きがちですが、ネット系銀行やスーパー系銀行に比べて審査基準が厳しく、また金利も手数料も高い場合が多いです。メガバンク以外の銀行も、検討材料にいれるべきです」
「借り換え」は一度だけとは思うな!
「借り換えは何度でもできます。ローンのシミュレーションができる無料サイトもあるので、どれだけ得になるのか、ぜひ計算してみましょう」
 これまで、一般的にローンの残金が1千万円で、残りの返済期間が10年、金利差が1%あれば〝借り換えチャンス〟と言われていたが、もっとチャンスは幅広いという。
「借り換えには、単に月々の返済額だけではなく、借り換えに伴う保証金や印紙税などの諸経費がかかりますが、それを差し引いても、借り換え効果は無視できません」
残金800万円、残り期間8年、金利が3%から2.2%の0.8%差であっても、約20万円ほど手数料はかかるが、トータルで7万円〜8万円も返済額を減らせるという。
「銀行にローンを申請するだけで減額されるのですから、損はありません。金融機関は、契約者が他機関に借り換えることを嫌がりますので、契約中の金利を下げて〝引き止め工作〟をするケースもあるようです。交渉してみて、損はありません」
銀行の「手数料」をバカにするな!
「銀行の普通預金の年利は0.001%です。100万円を預けても、1年でわずか10円ほどしか利息がつきません。それなのに時間外で預金を引き出せば、1回につき108円の手数料がかかったりします。手数料の高さは、日頃から意識しておくべきです」
つまり、銀行にとって手数料は〝もうかるビジネス〟なのだ。マイナス金利で苦しめられる金融機関は、今後、口座管理料など、さまざまな手段で手数料を徴収してくる可能性がある。
間もなく消える「高い予定利率」を見逃すな!
 「今はまだ貯蓄性の高い商品があります。オリックス生命保険の終身保険RIESは、40歳〜60歳までの約218万の払い込みに対し約231万円も払い戻しがあります。第一生命の終身保険エスコートUも、40歳〜65歳までの約268万円の払い込みに対し、300万円も戻ります。
 とくに多くの学資保険は、払い戻し率110%ほどと高い。100万円を払えば、18歳のときに110万円となって戻ってくる計算です。こうした利率のいい商品は保険会社によっては運用もままならず、販売停止も始まっています」
 
ゴージャスな医療保険には入るな!
「年収500万円から600万円の家庭では、12年までの6年間で、月に支払う保険料を1万円も削減しています。給与やボーナスが減らされるなか、一般家庭にとって生命保険を契約し続けることは、家計に大きな負担となっているからでしょう」
 今後も保険のスリム化は必須。過度な入院費保障に目を向ける。
「保険会社のセールスでは、入院している期間、1日につき1万円が支給されるような手厚い保険を勧めてきます。『高いから』と断ると、次に5千円の商品を(笑)。しかし、そもそも入院費用にそれほどの手厚さは必要なのでしょうか。胃がんであっても、平均入院日数は27日ほどで、一カ月にも満たないのです」
 入院を要する高額な治療費を支払うことになっても、健康保険で大部分がカバーされる。
「支給を受ける回数、年収によって自己負担額が変わってくるので、医療機関や役所などで確認する必要がありますが、例えば年収500万円ほどで、70歳未満の国保加入者は、月にかかる医療費のうち約8万円が自己負担となりますが、それを越えた場合は『高額療養費』として、全額払い戻しを受けられます。
 生命保険に入る場合は、こうした行政の支援も念頭に入れ、本当に自分に必要な保障だけに絞り込んでみましょう」
 先進医療対応や再発がん対応商品を充実させれば十分だと考えている。
「先進医療の技術料は、一般医療と比べ物にならないほど高額で、健康保険対象外となります」
 たとえばがん患者のための陽子線治療の技術料は250万円、重粒子線治療では300万円を超えてしまうほど。
「もし、将来、病気になってそうした治療をしたいと考えている人は、加入しておくべきでしょう。とくに先進医療が受けられる施設は数少ないので、遠方まで治療を受けに行くケースが多いです。その際の交通費もカバーされているような保険を選ぶことがポイントです。 また、がんは一度きりで終わりにならないケースもある。再発がんにも対応している商品もいいかもしれません」
公的年金の「支給額」を信用してはいけない!
「マイナス金利による影響で、団塊世代では払い込み額の約プラス7%で受給できている年金も、団塊ジュニア世代では元金を割ってしまう可能性が。両者を比べると、トータルで1千万円くらいの受給額の差が出る場合もあります」
 高金利の外貨預金は、ホントに儲る!?
「いまや低金利の日本で100万円を定期預金しても、手数料などを考えると〝元金割れ〟となる可能性も。それならば、金利の高い海外口座で定期預金を作る人が増えてきていると思います」
 ソニー銀行や新生銀行などでもは1米ドルの領外手数料がAUZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)や中国工商銀行などでは、日本で口座を開くことも可能。
「AUZでは、日本円で50万円から定期預金で来ます。豪ドルの預金となると、1年定期で金利が3%と、日本の10倍近く高いです」
 これだけ聞くと、思わず飛びついてしまいそうだが、現実は甘くない。
 1豪ドル78円で計算するとー。
「1豪ドルにつき両替手数料が1.4円かかります。引き出す時も、日本円に料害する際には同じ額の手数料が。さらに税金が約20%かかります。すると、儲けがでないどころかマイナスになる可能性もあります」
 ただし、今後、円高が続くようなら投資の意味はあるという。
「その際は、ソニー銀行や新生銀行など、両替手数料の安い銀行をチョイスする用がいいでしょう」