月に1回のアルバイトのみ
 「あ~あ。明日も暇だ」
 Tホテルに勤務していた61歳の林さんの声は憂鬱だ。
 定年後の生活の準備を早めに整えておけばよかったとため息をつく。想像以上に退屈なのだそうだ。
 「少しだけゆっくりするつもりだっただけ。部長はまだ雇売っていってたから信用して安心しきっていた」
 図書館で一日中過ごすことも多くなった林さんは、部長の言葉にだまされたという。
 「前の会社から与えられた仕事は、毎月1回出勤して書類を整理するだけ、なんだか惨めだよ」
 780万円の年収だけど、一人っ子の子どもはずっと公立だったから助かった。
 退職金の900万円の使い道は貯金に7割。残りは増築費用に回した。住宅ローン毎月7万円は年金から支払うと楽観的だ。
 今後は、定年の年齢を引き上げるか(初年度は62歳まで)、定年後も何らかの形で雇用を続ける、などのいずれかが会社に義務づけられるようが、全員があてはまるわけではない。
 「ボランティアでもなんでもいいから仕事がしたい。自分の家なのにいずらい」
 林さんの自信喪失は、働いている元気のよすぎる妻の悪影響なのだろうか。
 
酒増税が小遣いに響く
 林さんは週に4回は飲み会に参加していた。それなのに、現役でなくなると「ご馳走するといって誘っても断られる」と肩を落とす。
 退職したら必然的に妻は家計を切り詰めるようになった。
 「冷蔵庫にはビールも入ってないよ。かみさんまで『働かざるもの食うべからず』と冷たくなった」
 自分のお小遣いから酒を買うしかない。
 ところが2006年5月からワインと第3のビールが値上がりする予定。
 「ワイン好きの俺にはついてないよな。1本10円以下の増税だけど、今のうちに『シャトー・ヴァントナック オーク・エイジド2002』12本を木箱に入れて買った。2万2000円にまけてもらった」
 安いのが魅力の第3のビールの値上がりも貧乏人には痛いと嘆く。
 「店頭では、『のどごし生』などの第3のビールは約130円と安かったのに最大4円近く増税される。10円以下の値上がりだけど、これから金が出ていくばかりの俺には辛いよ」
 逆にこれから減税される予定の清酒・ビール・ウイスキーを飲むようにする、と苦笑い。
 かわいそうに。大の男が増税にあわせてアルコールの嗜好を変えるというのだ
アルコール大好き林さんの小遣い帳

     
  月額 45,000
ランチ代 13,500
ビール代 10,000
  食事代 9,500
  ワインまとめ買い 22,000
  小計 55,000
  10,000