シンガポールは年金のお手本
「正義感がありプライドが高い、平均が大好き」
香港でクルーをやめてから中国に留学、その後シンガポールに渡ったときのシンガポール人の印象です。
例えば電車の中で痴漢らしい変な男性が近ってきたとき、シンガポール人の男性は私に席を代わってくれただけでなくその変態に文句を言い出し喧嘩しだしたのです。日本では見て見ぬふりをする人が多い中、多くのシンガポール人は正義感と勇気であふれていると感動したものです。
一方で「平均的な幸せが一番」といった風習があります。
マレーシアから独立したシンガポールには「シンガポールチャイニーズ人」「シンガポールマレーシア人」「マレーシア人」「インド人」が宗教上の問題を起すことなく仲良く住んでいます。その秘訣は仏教やヒンズー教などの寺院が数メートルおきにあり、公平に宗教を重んじている国だからともいえます。
そして、もう一つの理由は会社での規則や法律が平等で厳しいからともいえます。中国や香港ではツバをはき捨てる人が多いのに、シンガポールではそんな人は見かけません。ゴミを捨てたり、トイレの水を流さなかっただけで罰金を払わなければなりません。規則が厳しいために自然にモラルを重んじる人が多くなったのです。
シンガポールに住んでいる人は法律が厳しいなどと政府に文句を言うことはなく、むしろ政府に感謝している人がほとんどです。
特に、シンガポール独自の制度でCPF(中央年金基金)という制度は、かなり誇りに感じているようです。
年金制度によって積み立てた資金を住宅や教育資金としても利用でき、年金制度と医療保険制度が一体化していて積立方式です。これなら日本より少子高齢化が進んでいるシンガポールの財政負担も少なくてすみます。
一般的にシンガポール人は就職してからこの制度に加入し、毎月の給与から個人負担20%、会社負担が16%をそれぞれCPFが管理している個人の口座に積み立てます。結婚すると同時にCPFから頭金を引き出しHDB(公共住宅)を購入する人が多いため、シンガポール人の85%が賃貸ではなく持ち家なのです。国民の85%が持ち家を持てるという国は世界でも稀です。
また60歳以降はCPFから年金が支給され、どんな人でも平均的な幸せを手にすることができるといった満足感を得ることができるのです。
個人の積立方式がベースなため、日本のように高齢者が就業の中心となる若者に依存するといったことがありません。
個人主義であるイギリスの文化をうまく取り入れているシステムともいえます。シンガポール人一人一人が正義感がありプライドがあり洗練されているのもそのためかもしれません。