経済社会学会ニューズレター
第43 回全国大会プログラム
部会研究会報告要旨富士通総研柏木理佳
2006 年12 月9 日経済社会学会東部部会研究会報告立教大学
中国企業による対外投資
本論文においては、中国経済成長が続く中、近年、中国企業による海外への対外投資も増加している。本論文では、中国企業による海外での対外投資の実態、背景と目的、問題点について検討する。
中国では1999 年頃から中国企業の海外での対外投資が頻繁に行われ始めた。1992 年には40 億ドルとなり前年に比べて4 倍に増加、1993 年には44 億ドルでピークとなり1994 年から1998 年までは20 億ドル台を推移し、2000 年を底に、2001 年には再び69億ドルに急増した。これは、1999 年に中国政府が「走出去」の戦略を提起したこと、「第10 次五ヵ年計画」に対外直接投資拡大方針として明記されたことに加えて、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟したことが後押しする形となった。
中国の場合は、欧米の競争戦略に加えて、資源・開発、技術力やブランド力の獲得、人民元切り上げへの対策、国内の過剰投資の解消、貿易摩擦に対応することを目的としている。金融面での支援策や許可の手続きの簡素化など、政府も企業の対外進出を奨励していることが特徴である。近年では2005
年3 月、商務部と国家外貨管理局共同で「企業海外買収事前報告制度」を公布し、企業の国際経験の不足を補うため政府で把握している情報や資源も活用させるなど政府が全面的に協力している。
ブランド力が不足している中国では、対外進出によってブランド力を強化することを目的とし成功した企業では、ハイアールが代表である。しかし、世界中に知名度を残したという点では評価できるものの、いわゆるブランド=高級品として位置づける戦略としては成功しているとはいえない。ブランド力としえの優位性は弱く、途上国にとどまっているのが現状である。
積極的に海外に進出を展開している中国企業であるが、貿易摩擦、収益率の低さ、比較優位性が少ないなど多くの問題点が残されている。企業としてのグローバル化、また市場経済としての民営化が促進を早急に進めなければ対外進出の成功は期待できないといえる。
第43 回全国大会プログラム
部会研究会報告要旨富士通総研柏木理佳
2006 年12 月9 日経済社会学会東部部会研究会報告立教大学
中国企業による対外投資
本論文においては、中国経済成長が続く中、近年、中国企業による海外への対外投資も増加している。本論文では、中国企業による海外での対外投資の実態、背景と目的、問題点について検討する。
中国では1999 年頃から中国企業の海外での対外投資が頻繁に行われ始めた。1992 年には40 億ドルとなり前年に比べて4 倍に増加、1993 年には44 億ドルでピークとなり1994 年から1998 年までは20 億ドル台を推移し、2000 年を底に、2001 年には再び69億ドルに急増した。これは、1999 年に中国政府が「走出去」の戦略を提起したこと、「第10 次五ヵ年計画」に対外直接投資拡大方針として明記されたことに加えて、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟したことが後押しする形となった。
中国の場合は、欧米の競争戦略に加えて、資源・開発、技術力やブランド力の獲得、人民元切り上げへの対策、国内の過剰投資の解消、貿易摩擦に対応することを目的としている。金融面での支援策や許可の手続きの簡素化など、政府も企業の対外進出を奨励していることが特徴である。近年では2005
年3 月、商務部と国家外貨管理局共同で「企業海外買収事前報告制度」を公布し、企業の国際経験の不足を補うため政府で把握している情報や資源も活用させるなど政府が全面的に協力している。
ブランド力が不足している中国では、対外進出によってブランド力を強化することを目的とし成功した企業では、ハイアールが代表である。しかし、世界中に知名度を残したという点では評価できるものの、いわゆるブランド=高級品として位置づける戦略としては成功しているとはいえない。ブランド力としえの優位性は弱く、途上国にとどまっているのが現状である。
積極的に海外に進出を展開している中国企業であるが、貿易摩擦、収益率の低さ、比較優位性が少ないなど多くの問題点が残されている。企業としてのグローバル化、また市場経済としての民営化が促進を早急に進めなければ対外進出の成功は期待できないといえる。