福田康夫首相の突然の辞任表明で、いつの間にか日雇い派遣禁止の議論が減り、総裁選の話題でいっぱいです。
さて、日雇い派遣を原則禁止して、本当に低所得者層の雇用安定などの問題は解決するのでしょうか? 厚生労働省の調査では、今後希望する働き方について、日雇派遣労働者の5割弱が「現状のままでいい」と回答しています。
経済同友会は3日、政府・与党が検討している「日雇派遣の原則禁止案」に対する意見を発表しました。意見はまず「日雇い派遣を禁止しても、日雇い労働者が直接雇用に移行する保証はなく、労働市場のミスマッチで雇用機会が失われる恐れがある」と指摘しています。
そのうえで日雇い派遣の改善点として(1)派遣会社のコンプライアンス違反を厳しく処分(2)危険が伴う業務は安全衛生教育教育を強化するか、派遣を禁止するかする(3)常用雇用への公的支援を強化し、派遣会社も厚生制度を充実する(4)職種別賃金開示により派遣会社のマージンを適正化-などを挙げています。
同友会の意見にもあるように、日本では労働力の需要と供給のミスマッチを解決しなければ、日雇い派遣を原則禁止しても表面的な手直しにしかなりません。年収200万円以下の低所得や不安定な日雇い派遣労働者などを直接雇用につなげるには、ハローワークの常用就職サポーター制度などにリカレント教育制度が必要です。労働者一人一人に合わせ、必要な技術などを習得させるのです。同時に企業が直接雇用したい人材を育成する機関も必要です。
こうした直接雇用拡大の取り組みが遅れているように見えます。個人のキャリア対策ができてはじめて直接雇用につながります。需要と供給のミスマッチの解消のための効果ある支援制度を整え、日雇い派遣禁止についても抜本的な問題解決のために十分に議論してほしいものです。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)