「日本企業は中国人に人気がない」という話を知っていますか。特に中国人を中心にアジア人の転職先では、日本企業は人気がありません。事実、日本の企業に入社した中国人ビジネスパーソンの多くは、数年後に欧米企業へ転職してしまいます。「日本企業は充実した研修をさせてもらえるところ。出世を考えるなら欧米企業」と考える人が多いのです。そこで今回は、中国人特有のビジネス観や日本企業のとらえ方を見ていきましょう。
■ 肩書きなしでは評価されない中国
中国人は出世願望がかなり強いのが特徴です。名刺を見たら、まず最初に肩書きをチェックします。メンツを気にする中国のビジネスパーソンは、肩書きのある人とない人で対応を全く変えてきます。
例えば、肩書きのない人が営業訪問に来た場合、全く相手にしないことが多いのですが、肩書きさえあれば「とりあえず話を聞いてみよう」という気持ちになるようです。肩書きで人を判断するのは、中国以外でもあるとは思いますが、その対応が明らかに違うのです。
接待も交渉も肩書きによって全く異なります。もちろん個人差はありますが、中国は人脈が大事ですから、取引先と良い関係をつなぎ、新しい仕事をしていくには肩書きなしでは仕事が先に進まないのです。
ほかにも顕著な例があります。中国では人材の募集要項に「営業課長募集」などと役職を入れると応募が殺到します。応募者にとっては、「課長」という役職が最も重視されます。企業は、優秀な人材を多くの応募者から選抜するために工夫しているのです。
中国のビジネスパーソンは、管理職のポジションに就くか就かないかといったことがモチベーションを大きく左右します。また、ストックオプションを与えたり自主決定権を与えるなど、企業は優秀な中国人を維持するための努力をしています。
企業のトップが自ら大学で特別講義をして、その場で学生の質問に答えることで企業文化や経営理論を理解してもらう取り組みもしています。日本企業でもこういった努力をする企業は増えているとは思いますが、中国企業の方がより積極的です。
■ 日本企業を退社する理由
日本企業をステップアップの場所としてとらえ、数年で退職する中国人が後を絶ちません。実際に日本企業で働いた経験のある中国人に退社理由を聞いてみると下記の通りでした。
・教育制度は充実しているが、出世までの道のりが長い
・チームで認めてもらえても、自分自身の評価や能力を認めてもらえなかった
・どれだけ頑張ってもボーナスが上がらない
・チームを大事にするわりには、秘密主義なのか同じマネージャーレベルでの会議ばかりで情報が部下に浸透していな
いことが多かった
・人間関係がうまく作れなかった
・会社の将来性が明確に見えなかった
・チームで認めてもらえても、自分自身の評価や能力を認めてもらえなかった
・どれだけ頑張ってもボーナスが上がらない
・チームを大事にするわりには、秘密主義なのか同じマネージャーレベルでの会議ばかりで情報が部下に浸透していな
いことが多かった
・人間関係がうまく作れなかった
・会社の将来性が明確に見えなかった
個人の能力で勝負し、昇進や給料アップを強く希望する中国人ビジネスパーソンにとっては、日本で働くのは、「新卒や20代前半には研修教育が充実している」「社会人として基本的なマナーなどを学べる」以外での魅力は考えられないのかもしれません。
それに加えて、中国のビジネスパーソンは積極的に転職することでキャリアを築き上げていく傾向があります。中国の人材ビジネス会社の担当者は、「一般的に中国のビジネスパーソンは、転職を2~3年おきに繰り返します。そもそも転職は悪いことではありません。希望する収入と肩書きの両方を手に入れるには、転職は有効なキャリアアップ手段です。中国人は中国経済が成長している今がチャンスだと考えています。それを逃したくないから必死です。かなり強気に転職活動をしています」と言います。
転職組みが強気で転職を繰り返している中国は、就職難など関係ないと思うかもしれません。ですが実際は、新卒の就職難は日本とさほど変わりません。中国の文部科学省にあたる「教育部」の公式発表によると、大学生の就職率(大学院進学を含む)は2006年で72%でここ5年間は増えていません。就職率を上げるために就職できなかった学生に対して卒業証書を渡さないといった大学の不正も増えて問題になっています。このため、本当は5割近くが就職できていないとも言われています。
新卒採用が厳しい理由はいくつかあります。
・大学の増設に伴い入学者数が増加した。2006年は546万人で8年前の5倍以上に増えた。このため、レベルの低い学生が大学に入学するようになった。
・一流企業に就職できなかったらメンツがつぶれるため、大学院や留学させる親が増えた。
・就職活動を支援している場が大学の電子掲示板や合同企業説明会に限られている。日本のように就職情報雑誌も多くない。
・大学の増設に伴い入学者数が増加した。2006年は546万人で8年前の5倍以上に増えた。このため、レベルの低い学生が大学に入学するようになった。
・一流企業に就職できなかったらメンツがつぶれるため、大学院や留学させる親が増えた。
・就職活動を支援している場が大学の電子掲示板や合同企業説明会に限られている。日本のように就職情報雑誌も多くない。
日本企業を研修期間と割り切る背景には、転職者、経験者の率先力を欲しがっている中国企業の特性があります。これは、転職者より新卒者への研修に力を注ぐ日本企業とは大きく違います。中国人ビジネスパーソンはこれらを熟知したうえでキャリアアップを試みているともいえるでしょう。