シンガポールで働いているとき、職業意識の違いに驚きました。「学歴」と「職種」による差が明確なんです。欧米型の実力主義である半面、学歴主義も根強く残っています。年功序列ではなく実力主義なため、できる人が転職してきていきなり管理職になることもあります。そのときに必ずチェックされるのが「学歴」や「資格」です。
大学卒業というだけで必ず出世できるコースが約束されています。資格も非常に高く評価されます。大学進学率が日本より低いので一概に比較できませんが、資格を生かした部署に配置するのがシンガポールの会社です。つまり資格取得者を無駄にしない人的資源の活用が構築されています。何より資格取得するために努力し続ける人材が高く評価されるのです。
だから自分のエンプロヤビリティ、つまり自分の雇用価値を高める専門知識の習得に自己投資をしているのです。
それは「職種」へのこだわりでもあります。シンガポールでは技術系やサービス関連などの職種が求められています。人事担当希望なら、プログラム開発の専門用語を学んでIT企業の人事部に配属された人がいたり、経営学修士となって不動産会社の営業からコンサルタントに転職したりする人もいます。
日本の場合、コンサルタントとソフトウエア開発者の年収格差はおよそ250万円といわれています。経済産業省が策定したITSS(ITスキル標準)で8段階に分かれていて、今の自分の位置がわかるようになっています。別の職種でもこういったもので自分の現在の位置を客観的に確認すると便利です。
今の仕事を聞かれ、即答できる人はどれだけいるでしょう。
「○○なんだけど、実際にやっている内容はちょっとずれてる…」という人はいませんか? 専門知識を習得する努力をすれば、この「ずれ」を解消できるし、異業種を新たな仕事にできる可能性もあるのです。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)