痴呆症の母親のために働く宮田さん
 「俺は小さいときから片親で、母親を田舎から千葉に呼び寄せたんだ」
 自分のマンションに母親と同居することになったものの、近所に友達もいない暮らしは母には辛かったようだ。
 「まさか、あの母が痴呆症になるとは思ってなかった」
 高校卒業して上京しK飲料の製造部に勤務した宮田健二さん(58歳)は、現在千葉支社で働いている。
 「妹が結婚して東京に出てきてからずっと母親のことは気になっていた。30年勤務していた東京本社から千葉支社に移転になると同時に引越、そして母親と同居を決めたそうだ。
 「どうせ僕は独身だし、母親も弱ってきていると思ってね。面倒みるのは簡単だと思ったんだけど、そうじゃなかったね」
 ホームヘルパーにも依頼したものの、残業が続いているときに、母親が隣の家に泥棒に入ったそうだ。トイレも一人でできなくなった。
 「これじゃあ、心配で飲みにも行けなくなってね。とうとう施設に入居させたよ」
 緊急連時の連絡システムや食事の宅配サービス、バリアフリー住宅が備わっている。少なくとも働いている間は心配事はなくなったという。
 しかし、それまでには苦労が耐えなかった。
 「200万円の一時金を払ってケアハウスに入居させたけど、痴呆が進んですぐに退出させられた。特別養護老人ホームでの入居を探したけど、満室で1年待ちだった」
 「会社から近いところだと一時金が1000万円もするんだよ。僕は退職金がもらえるかどうかもわからない。もらえても800万円くらいかな。その上、千葉の家は買ったばかりで借金が1500万円も残っている」
 どうしようもなく悩んでいるときに、運良く家賃が18万円で入居時にお金がかからない特別養護老人ホームが見つかったそうだ。
 高齢者住宅の物件を探すのは本当に難しい。業績の悪化した企業が放出した物件を1000万円以下で売りに出しているところもある。高齢者居住支援センタやNPO福祉マンションをつくる会などに相談したそうだ。
 それでも毎月20万円の出費は年収750万円の田原さんには決して楽ではない。しかし、自分の自由な時間が確保されたから今は幸せだという。
宮田さんの小遣い 4万円のうちパチンコ代が1万円も
 宮田さんの唯一の楽しみは会社帰りのパチンコだそうだ。
 「池袋はヒマな学生が粘っているから玉はでない。新橋なんかは無知な親父がついつぎ込むから、出るときには出るんだよ」
 残業のない日に週に1回、多いときには2回、2時間くらい。会社のない土曜日も一日中いる。若い店員の女の子が自分にだけ特別にオシボリのサービスなど提供してくれるのが唯一の楽しみという。
 毎月6000円から1万円ほど使う。たまに6万円ほど稼ぐけど年間の収支はマイナス。今のうちに貯金しなければ自分の老後はどうする?
パチンコが唯一の楽しみの宮田さんの小遣い帳

     
  月額 40,000
ランチ代 15,000
食事代 15,000
パチンコ代 10,000
  小計 40,000