退職金なしで熟年離婚もできない
「うちは、完全な家庭内離婚 なんだよ。毎日、家に帰っても部屋にこもって一人でラジオ聴いて過ごしている。夫婦の会話もほとんどない。だけどカネがないから離婚も出来ないんだよ」
と、悲しそうにもらすのは、Y運輸会社に勤務している54歳の中川一郎さん。
「熟年離婚が出来る人はうらやましい。中小企業のサラリーマンだから退職金もない。みすぼらしいもんよ」
じゃあ、「仲良くすればいいのに」と私が切り返すと、「長年の深い溝で・・改善できなくなった」と、うつむく。
3歳若い妻は近くのスーパーで時給900円でパートしている。毎月15万円稼ぐからこれを家賃に当てているそうだ。
子どもが来年高校を卒業し就職する。中川さんの月収39万円の給料から15万円は残るようになる計算だ。
「でも自宅は借家だし、退職金がもらえないから老後の生活は苦しい。今さら貯金しても遅いよ」
妻はへそくりがあるかどうか知らないが、本人は貯金がないというから驚く。
「ボーナスを一括でそのまま何度か1000万円も払い込んだ確定定額年金保険が、60歳から毎月約10.9万円、10年間もらえるけど、それだけじゃ少ない」
生活費が足りなくても体力があるから毎月15万くらいなら稼げるよ。いつまでも働けると強がる。
だけど、いずれ体力がなくなったらどうするのだろう?
競馬で一攫千金もうけて離婚したい
中川さんのお小遣いは毎月3万円。その内訳はコンビニ弁当と競馬ばかり。
「老後の金の心配を解消するのには、一攫千金当てるしかない」と気合を入れている。
体格のいい元気な中川さんはとても50代には見えない。
中川さんは、将来の不安を打ち消すように競馬にのめりこむ。
「どうしても競馬で大穴を当てたい。そうすれば念願の離婚ができるんだ!」
競馬は楽しみというよりも、執念を感じた。
毎週土曜日にどんなことがあっても競馬場に行く。毎月2万円が消えていく。
競馬で儲けて離婚したいと夢見る中川さんの小遣い帳
月額 | 30,000 | |
収 | ランチ代 | 5,500 |
支 | 競馬代 | 20,000 |
食事代 | 4,500 | |
小計 | 30,000 |